イランでジェンダーを考える:トイレ問題

保毛田保毛男が放送されて、思った以上の反響があり、性的マイノリティの問題が(そもそも”問題”ってのがおかしいが)メジャーになって来たなと感じる昨今。

ここイランにも性的マイノリティの人々は数多くいる、というかマイノリティといいつつ、日本よりは比率が多いのではないかと感じてしまうほどです。ただ、同性愛に関して、イスラム教では寛容ではないので、彼らは一応ひっそり存在しているという感じです

イランの性的マイノリティの話は置いといて、今回はトイレとジェンダーの問題にフォーカスしたいと思います。

トイレは個室が多い

礼拝が1日に5回(シーア派は3回)ある度に、体の部位を清めるために洗わなければいけないので、トイレは洗い場の役割も兼ねています。そのためか、トイレは基本的に個室で、洗浄用のホースが付いているのが基本的です。

国によって違いますが、イランでは小便器は一般的ではありません。ほとんどの男子トイレでも全部個室で女性用トイレと同じ間取りです。きっとペルシア語が読めない旅行者にとっては男性用トイレか女性用トイレかおよそ見分けがつかないでしょう。小便器が一般的でない理由は、この洗浄のための場、ということもあると思いますが、イスラム教では他人に、膝の上からへそまでの臀部をむやみやたらにみせてはいけない、という決まりがあることも影響していると思います。

トイレは東南アジアとかと比べてある一点を除いて綺麗です。洗い場も兼ねているので、清浄な場所にしておかなければいけないので、公共のトイレやモスクのトイレは頻繁に清掃が入るので綺麗です。ただ、お祈りで洗浄する度に、床を水浸しにするので、砂の多い土地柄、靴の底に泥をつけてトイレに入るとたちまち床が汚くなってしまうという始末です。この影響で見かけは汚いですが、先にも述べた通り、清掃も入るので公衆トイレは安心です。ただトイレットペーパーのような紙はありません。

誰でも入っていいトイレ?

そんななかで、公衆トイレではないですが、商業ビルの一角のトイレに行ったことがありました。そのトイレは、もちろんすべて個室なので、見かけ上は区別がつかない。天井には”WC”と書いてありながら、男女両方のサインが書いてあるので、よくわからないものの、入ってみると、数個の個室があり、男女のトイレが隣り合ってる。「男用」「女用」とか書いてある紙が貼ってあるトイレと、貼ってないトイレがある。「んん?誰でも入っていいトイレかなぁ?」と思って入ってみたら、設備はどれも同じ。同時に異性の人も入っていて、男女共用のトイレを使うのが初めてだったので、ちょっと新鮮な体験だったのと、気づいたこともありました。

男女共用トイレの潜在的問題

「多目的トイレ」というのが存在して、誰にでも使えるようにするというのが一般的になっているが、性的マイノリティの人々が使うトイレ問題も加味して、全部個室にして共用にしてしまえという理想論がある。コンセプトとしてはわかりやすいし、誰でも使えるものとして、問題の解決にもつながりそうだが、そこには潜在的な、小さいけど大きい問題を発見しました。

音問題

日本は「音姫」を開発するほど、「トイレの音問題」には、敏感らしいですが、この男女混合トイレだと、この音問題が結構顕著に影響します。というのは、用を足した後、音を聞きあった、男女が一緒の洗面所で手を洗っているのはなんだか、変な気というか、受け入れられない気がするのです。これが神経質な日本人だともっと大きな問題になると思います。個室のセパレーションが貧相なイランでは、現地人は気にしないけど、日本から来た人間にはなんとなく気になってしまうものである。

解決策としては、音姫を置くとか、個室をきちんと分離するとかあるのだろうけれど、どれも男女別型トイレに加えて、コストがかかりそうでならない。

時間問題

時間問題は日本でも起こりうるが、共用トイレだとリアリティを増します。
たとえば男女のグループで「ちょっとトイレ行ってくるね〜」となって、そのかかる時間によって色々No.1かNo.2かなどと推測してしまうものです。これが、洗面所も共用だと顕著になると思います。なぜかというと、トイレの空き状況が一目でわかるようになってしまうので、分析に手を貸してしまうということです。これもセンシティブで日本的な問題だと思いますが、もし導入するなら大きな問題になりそう。この国だったら、「お祈りだから、手足洗ったんだよ〜」なんて言えそうですが。

また待ち時間についても、問題が発生しそうです。よく映画の後などでトイレをみると、男性用トイレは空いていて女性用トイレが混雑しているなんて状況がありますが、それに男性も加わるとなるとまた、待ち時間の公平、不公平について新たな問題が発生します。

防犯上の問題

全ての男性が犯罪者と言うつもりはありませんが、共用トイレでは、盗撮といったような犯罪が発生しやすくなると思います。もちろん、例えば男性用トイレの中でも男性同士での盗撮事件などは発生するかもしれませんが、単に、共用にすれば、トイレでの接触が増え、そういった犯罪の機会がふえることが懸念されることです。

また、マジョリティの男女にとっては、自分の性別のある意味安全地帯のようなところが、消えてしまうのも、心残りな問題です。トイレはある意味逃げ場としての意味もありましたが、個室でセパレートしているとはいえ、安全地帯の喪失といった感は否めないと思います。

ここまで、イランで男女共用のトイレを経験したところから、思いついて書いて見ました。この国にはジェンダーについて考える観点を与えてくれる機会があります。今後も公共空間の問題についてなど、検討してみたいと思います。

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